その勇気
2002年8月4日 人生において勇気を出すのは大切なことだ。あの時もう少しだけ勇気がもてれば…。そんな後悔はひどく切ない。そうならないためにも勇気を出して、勇気を持ってあたし達は向かわなければならい。例えば夢に、例えば困難に。そしてあの子に。
そんな勇気。
そして、かく言うあたしも、本日そんな勇気をふるう局面に出会った。まあまあ正確に言うには今までずーっとそのチャンスがあったにも関わらず、勇気を持てなかったと言うべきだろうか。
場所は都内某所のラーメン屋。雑誌とかにもチョイチョイ紹介されちゃうような有名な店らしいが、味の方はまあ悪くない。取り立てて騒ぐ程かどうかは別としても、独特の、そこでしか食べられないといったような味だ。
そんなラーメン屋のカウンター、中程の席であたしはいつもの如く注文した品がくるのを待っている。狭い店内に他に客は5、6名ほど。昼過ぎ、おやつの時間にしてはそこそこの入りだと思われ、さすがソコソコの有名店。
そして、注文の品があたしの前に置かれる。白いドンブリに入った細麺、油少な目、もやしねぎラフティ煮たまご入り。バッチリ注文通り。しかし、その様相と言ったら「しまった!もやしとラフティは余計だったか!?」と思わせるくらいのボリューム。
そうなのだ。あたしはこの店に来るといつもこんな失敗をする。なにしろここはカウンターに座ってから落ち着いて注文ではなく、店に入ってすぐ、
「そりゃぁもう腹ぺこピークです!」
って時に入り口で注文してから席に座るため、すんごい、もうすんごいお腹減ってるときなんかいらないモノまで注文しちゃって、ごめんなさい食べ切れません。ってのがしばしばある。いや、良くある。
そんなわけなので、いかな油少な目とはいえ、チャーシュー食ってラフティー食えば、
「こんなしつこいモンもう食えるカー!!」
となってしまう。
しかし、しかしココであたしは今まで黒いベールに包まれその姿を拝見することすらできなかった謎の常連客メニュー「おろししょうが」を注文することを思い立った。2年ちょっとも通い詰め、未だ注文したことがなく、注文されたところを見たこともない謎トッピング「おろししょうが」。注文を取るはずの入り口付近にはおろししょうがの「お」の字も無いのに、カウンターにはこっそり
「おろししょうがをご希望の方はスタッフまで」
の張り紙。
これだ!これに違いない!今あたしが置かれている状況を打破する必殺の選択肢は、今まさに眼前に提示された。あとは勇気を出して。ほんのちょっとの勇気を持って、
「おろししょうがください」
って言えばいいのだ。言えばいいのだ!
「お、おろししょうがください…」
あたしは小声で、消え入りそう囁き、注文と言うよりは呟きに近い声で「おろししょうが」を注文した。するとどうだろう。店員が口々に
「はい!おろししょうがひとつ!!」
「はい!おろししょうがひとつ!!」
「はい!おろししょうがひとつ!!」
「はい!おろししょうがひとつ!!」
ああ、唱和が広がっていく。店中におろししょうがの唱和が広がっていくのだ。あたしが発したか細い呟きが水面に落ち、おろししょうがの波紋が店中に広がっていく。ああ、なんて温かな感情。おろししょうがを注文してよかった。あたたかいよ、とうさんかあさん。ボクは一人じゃない。
なーんんてなことを考えたかどうか。しかし、店中の店員が「おろししょうが」と言ったのは確か。間違いなくあたしの注文「おろししょうが」はオーダーとして店側に認知された。認知されたのだが。それからいくら待っても「おろししょうが」があたしの前に出されることはなかった。
目の前のラーメンはしつこいまま。麺も具もどうにかこうにか食べ終わって、スープを残すのみとなった今もあたしの前に「おろししょうが」が置かれることはなかった。
結局あたしは、そのしつこいラーメンスープを残して店を出ることになる。ドンブリの1/3程に満たされたラーメンスープの中にはねぎともやしの残骸が残り、あたしの中にはおろししょうがという疑問が残った。謎のトッピング「おろししょうが」とはなんだったのか。
なにもかも解らないまま店を出たあたしだが、たったひとつだけ解ったことがある。それは、勇気を出したがために後悔し、切なくなることもあるってことだ。
そんな桜井シイタさんのウェブサイトはコチラ→http://cta.euu.jp/sakurai/
URLがちょっとかわったよ。
そんな勇気。
そして、かく言うあたしも、本日そんな勇気をふるう局面に出会った。まあまあ正確に言うには今までずーっとそのチャンスがあったにも関わらず、勇気を持てなかったと言うべきだろうか。
場所は都内某所のラーメン屋。雑誌とかにもチョイチョイ紹介されちゃうような有名な店らしいが、味の方はまあ悪くない。取り立てて騒ぐ程かどうかは別としても、独特の、そこでしか食べられないといったような味だ。
そんなラーメン屋のカウンター、中程の席であたしはいつもの如く注文した品がくるのを待っている。狭い店内に他に客は5、6名ほど。昼過ぎ、おやつの時間にしてはそこそこの入りだと思われ、さすがソコソコの有名店。
そして、注文の品があたしの前に置かれる。白いドンブリに入った細麺、油少な目、もやしねぎラフティ煮たまご入り。バッチリ注文通り。しかし、その様相と言ったら「しまった!もやしとラフティは余計だったか!?」と思わせるくらいのボリューム。
そうなのだ。あたしはこの店に来るといつもこんな失敗をする。なにしろここはカウンターに座ってから落ち着いて注文ではなく、店に入ってすぐ、
「そりゃぁもう腹ぺこピークです!」
って時に入り口で注文してから席に座るため、すんごい、もうすんごいお腹減ってるときなんかいらないモノまで注文しちゃって、ごめんなさい食べ切れません。ってのがしばしばある。いや、良くある。
そんなわけなので、いかな油少な目とはいえ、チャーシュー食ってラフティー食えば、
「こんなしつこいモンもう食えるカー!!」
となってしまう。
しかし、しかしココであたしは今まで黒いベールに包まれその姿を拝見することすらできなかった謎の常連客メニュー「おろししょうが」を注文することを思い立った。2年ちょっとも通い詰め、未だ注文したことがなく、注文されたところを見たこともない謎トッピング「おろししょうが」。注文を取るはずの入り口付近にはおろししょうがの「お」の字も無いのに、カウンターにはこっそり
「おろししょうがをご希望の方はスタッフまで」
の張り紙。
これだ!これに違いない!今あたしが置かれている状況を打破する必殺の選択肢は、今まさに眼前に提示された。あとは勇気を出して。ほんのちょっとの勇気を持って、
「おろししょうがください」
って言えばいいのだ。言えばいいのだ!
「お、おろししょうがください…」
あたしは小声で、消え入りそう囁き、注文と言うよりは呟きに近い声で「おろししょうが」を注文した。するとどうだろう。店員が口々に
「はい!おろししょうがひとつ!!」
「はい!おろししょうがひとつ!!」
「はい!おろししょうがひとつ!!」
「はい!おろししょうがひとつ!!」
ああ、唱和が広がっていく。店中におろししょうがの唱和が広がっていくのだ。あたしが発したか細い呟きが水面に落ち、おろししょうがの波紋が店中に広がっていく。ああ、なんて温かな感情。おろししょうがを注文してよかった。あたたかいよ、とうさんかあさん。ボクは一人じゃない。
なーんんてなことを考えたかどうか。しかし、店中の店員が「おろししょうが」と言ったのは確か。間違いなくあたしの注文「おろししょうが」はオーダーとして店側に認知された。認知されたのだが。それからいくら待っても「おろししょうが」があたしの前に出されることはなかった。
目の前のラーメンはしつこいまま。麺も具もどうにかこうにか食べ終わって、スープを残すのみとなった今もあたしの前に「おろししょうが」が置かれることはなかった。
結局あたしは、そのしつこいラーメンスープを残して店を出ることになる。ドンブリの1/3程に満たされたラーメンスープの中にはねぎともやしの残骸が残り、あたしの中にはおろししょうがという疑問が残った。謎のトッピング「おろししょうが」とはなんだったのか。
なにもかも解らないまま店を出たあたしだが、たったひとつだけ解ったことがある。それは、勇気を出したがために後悔し、切なくなることもあるってことだ。
そんな桜井シイタさんのウェブサイトはコチラ→http://cta.euu.jp/sakurai/
URLがちょっとかわったよ。
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