さよならパンツ

2002年5月13日
 パンツに穴が開いた。ポッカリと口を開けた。前ではない。下でもない。どっちかというと後ろ。腰のゴムよりもちょっと下あたり。穴が開くほど穿くなよ。と思った。自分に叱責だ。しかしソレは誤解。穿きすぎて開いたのではなくて、引っかけて開いた。つまり切り傷だ。擦り傷じゃない。いつどの拍子で引っかけたかは知らないが、あたしはパンツ一丁で街を闊歩したりはしないので、それ以外のとき。外を歩いてるとき以外のいつかにパンツに穴が開いた。何とも寂しい限り。
 当然ながら穴が開いたパンツは穿けない。前でも下でもないので漏れたり落ちたりはしないが、パンツを穿いていない時だって漏れたり落ちたりはさせないので、じゃあパンツの役割は何か?と言う話になるがそういうモノを漏らしたり落としたりしないようにするためのモノなのか、はたまた自尊心か。とにかく漏らしも落としもしないあたしだが、穴が開いたパンツは穿けないので捨てることにする。
 それはなんだかカワイソウだが。ちょっとカワイソウだが、でも仕方ないがないのだパンツくん。穴が開いたら君はパンツではない。穴あきパンツ。穴あきパンツは世間一般、常識的には何かがマズイ。穴が開いてるので役に立たないので。カワイソウだけど、さよなら元パンツくん。
 そうして穴の開いたパンツをゴミ袋に入れようとする。ポイと入れようか、ガサゴソと入れようか。雑誌に挟んだり、紙袋に入れたり、はたまたジョキジョキ切り刻んだり。あまりのバリエーションの多さにどれを選ぶべきか。最前の方策を模索するが、果てさてパンツくんはどうして欲しいのか。でも、きっと、捨てられたくはない。そうに違いない。
 だっていつも一緒だった。いやソレはタイヘン語弊があるが、ちゃんと洗濯して毎日取り替えて我が家在住パンツナインの一員として。もしかしたらパンツイレブンかもしれないけど。そんな彼らの一員。レギュラーパンツ。イレブンやナインもきっとツライのだ。他の仲間も泣いている。
 いつかは穴が開いて捨てられるサダメ。
 いつも穴が開くのはパンツの方だ。じっとじっと穴が開くまでの時間、パンツイレブンは洗濯機でグルグル回されたり、天日に干されたり、穿かれたり、脱がれたり。そんな時間の中でじっくりじっくり穴はやってくる。恐れろパンツ!穴がやってくる。
 でもパンツは抵抗しないのだ。穴が開くのをわかってる。穴が開いたら捨てられるサダメをちゃんとわかってる。
「さぁ、僕を捨てようサクライ」
 ああ。ああ。パンツの声が聞こえるようだ。聞こえたかもしれない。でも、それでもさよなら、さよならパンツ。穴が開いたらオマエは元パンツ。そういうサダメをちゃんと受け止める元パンツ。だからあたしもサダメに従う。さよならさよならさよならパンツ。
 だけど一寸だけ思うのだ。
 なんで、パンツに穴が開くのか。穴にパンツが開いたっていいじゃないか。たまにそんなコトがあった方が、きっと世の中オモシロイ。
 
 
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